ホントにやってみるのだ
消防点検は、消防設備がイザというときちゃんと動くのかを確認する検査である。
だから、すべての消防設備をホントに使ってみてチェックする。
オリローで降りろ!
避難器具も、ホントに使ってみてチェックする。
性能や安全性を、点検者が体を張って確認するのだ。
緩降機という種類の避難器具、その名も「オリロー」。
消防設備の商品名には、なかなか微妙なものがある。
余談だが、つり下げ式のはしごで「ユレーヌ」というのがある。
実際はそこそこ揺れるが、この命名もまたなかなかアレだ。
さてこの「オリロー」は、ヘリコプターでの救助シーンのようなスタイルで下に降りる。

松本機工株式会社ウェブサイトより
この避難器具は、井戸の釣瓶と同じ動きをする。
図の赤い部品(釣瓶の滑車にあたる部分)がこの避難器具の命だ。
この部分が人の体重を支えて、いい具合の速度で降りられるようにしてくれる。
スットーン!と落ちてもマズいし、ジワジワすぎてもヤバい。
いい具合の速度は、スルスル~。
実際に2階から降りてみて、3~4メートルの高さを10秒で降りた。
これが「ホントにやってみる」消防点検だ!
では、いよいよホントに使ってみる。
先に夫が降りる。
オリローをセッティングして自分の体にベルトを巻き、2階の窓枠によじ登る。

欠陥品とか、労災とか、生命保険とかいう言葉が頭をめぐる瞬間。

次の方、どうぞー。
さすが消防歴20年。
避難器具は信用できることを経験で知っている夫は、手早くアッサリと降りていった。
2階の窓にしがみつく
次はいよいよ私。
ベランダの避難はしごとか、ストロー状の救助袋とかをやってみたことはあるが、このタイプの避難器具は初めて。
ぶら下がって降りるところはオリローを信用するからまぁいいとしても、問題はスタートのところだ。
窓枠からの次の一歩、手を放すところがコワい。コワすぎる。
高いところがコワいとか、そういうレベルではない。
しがみついているその手を放す勇気、これに必要とする勇気はそうとうなものである。
手を放してみればたいしたことはない。
オリローのおかげで、スルスル~っと、静かに着地する。
やってみすぎ
やってみるのはキライじゃないが、避難器具の点検だけはやってみすぎなんじゃないかという気がする。
10階の窓にオリローがついてることもあるとか聞く。
ただ、一般的にはなかなかできない体験であるのはまちがいないので、この仕事は好きである。