よくある防災マニュアル
官公庁としては、イザというときの対応のすべてを公助に頼られちゃたまんない。
市民ひとりひとりに災害の知識を身につけてもらい、前もって備えさせとかなきゃってんで、ありきたりな防災マニュアルが作成・配布されている。

大分市が市民向けに発行している「わが家の防災マニュアル・保存版」
余談だが、「ありきたり」になるのは広くみんなに役立つようにしてるからであって、マニュアルに対して「役に立たない」とかイチャモンをつけるのは的外れである。
必要な備えは人によってさまざま。
ちょっとしたタイミングの差でもガラリと様変わりするほどの繊細さ。
一般的なマニュアルはたたき台でしかない。
これを自分用にカスタマイズしていくのが王道。
備えは、やればやるほど個性的になっていくのが自然なのである。
それはさておき
ありきたりな防災マニュアルには必ず、ハザードマップというページがある。

津波による浸水被害を想定したハザードマップ。
ハザードマップとは、自然災害の被害予測を地図で表したもの。
これを参考に、事前に備えたり早めの避難をしたりして被害を少なくすることができる。
ところが、なにぶん自然相手の話であるから想定外は起こりえる。
さらに、ハザードマップには予測被害が最大規模で記載されているという事実もある。
だから災害時には「意外と大丈夫だった」ということになり、「ハザードマップなんかアテになんないじゃないか」ということになってしまう。
ハザードマップ
例えば、こういう記載がある。

津波の浸水被害を受けるであろう水色部分と、避難ビル。
突然だけど、ここでちょっと、このあたりに住んでいる人の気持ちになってみよう。

あなたは 「県営高松住宅」の文字の下あたりに住んでいる。
あなたの家は、波浸水の被害を受けるか受けないかの微妙な場所にあるとする。
こういう場合、都合のいい方に考えてしまうのが人情というもの。
「ギリギリまで水が来るけど、ウチはなんとかまぬがれる」
3軒先の家が水浸しになっているのを、こっち側の乾いた道路に立って見ている。
そんなシーンすら脳裏に浮かぶ。
我ながらなんというご都合主義だろう。
なんとかして逃れたい
もっとおおざっぱな地図だったらどうか。

M9.1の最大規模の南海トラフ巨大地震の想定震源域(2013年、地震調査研究推進本部 地震調査委員会)
自分の住んでいる場所が、危険エリアのド真ん中の高知県や和歌山県だったらまだあきらめがつく。
ご都合主義を発揮してジタバタするのは境界線あたりの人。
私の住んでいる大分市は、上の地図では微妙なラインにある。
厳密に言えばエリア外。
外側の赤線がもうちょっと太く書いてあったらアウト、というレベルだ。
こんなときこそご都合主義が姿を現す。
「こういう予測地図の被害って、最悪パターンを掲載してるって言うじゃないの」
なんつって、自分の家がエリア外であるための理屈をこね始める。
波打ちぎわみたいなところに住んでいるというのに。
避難リュックとか包帯の巻き方とか消火器の使いかたとかを、用意したり習得したりするのは簡単なことである。
単純に「行動」すればいいだけだ。
キモなのは「自分事」にできるかどうか。
気持ちの部分が一番肝心で、一番弱い。