消防好きなら、消防車を作る工場を見学してみたいよね?
消防車と言えばモリタ。
モリタは、業界人なら反射的に連想するメジャーな企業である。
しかし、われらが九州にだって消防車を作っている会社があるのだ。

この奥で消防車が作られている。
ナカムラ消防化学
長崎市街地から車で約40分。
消防自動車を製作している(株)ナカムラ消防化学は、うねうねとカーブする山道の先にある。
こちらの会社とイグジットは、消防点検の協力会社として数年前からご縁が続いている。
お互い遠方のため、ふだんは電話やメールだけで業務をやり取りしていて、担当者の方とは一度も会ったことがないというありさま。
たまにはご挨拶をと伺ったところ「工場も見ます?」とお誘いいただき、消防車製作の場を見せていただくことになった。
社外秘
消防車を買うお客さんは消防署か消防団に限られている。
購入方法は入札。
したがって、いろいろとアレでナニなことが多く、納入まではほとんどマルヒで扱われるらしい。
当然ながら工場内は撮影禁止。
社外秘の多いメーカー見学レポートには画像がないのが常。
想像力でなんとかしていただくしかない。
【もうひとつの社外秘見学レポート、防災機器メーカー・ニッタン(株)】
消防車ができるまで

消防車の製作はここから始まる。
頭でっかちなトラックが街中を走るのを見たことはないだろうか。

イメージ図
あれと同じ状態のものをメーカーから仕入れて、後ろの部分に消防的なカスタマイズを施していく。
だから、トラックメーカーから仕入れる車体は頭の部分だけ。
ちなみにメーカーには、消防レッドと呼ばれる赤色の車体が用意されているのだそうだ。
カスタマイズ
消防車はすべてオーダーメード。
地域性や条例、既存の車両と装備などがそれぞれに違うので、同じ仕様書はふたつとない。

このように、消防団所有の機材を実際に配置しながら装備車両を製作することも。
微妙に複雑に違う仕様書に沿って図面を作っていくというのだから、聞いただけで気が遠くなる。
もう全面的にお任せするしかない。

仕様書と図面に基づいて、ポンプなどの機材を仮装備していく。
画像は真っ黒に見えるかもしれないが、ご覧の通り、この段階では車両後部は赤ではない。
すべての機材を仮で装備して発注元の検査を受ける。
検査に合格して初めてあの消防レッドが施されるという。

塗装ブース。ここですべてが赤に染まる。
最後の検査
人の命や財産がかかっているので、最後の最後まで厳しいチェックがある。

自動車工場にある検査台と同じようなものがある。
完成した消防車はこの検査台に乗せられる。
ここでは傾きに耐えられるかをチェックするそうだ。
傾斜は30度。
30度と言えば、学校で使う三角定規の二等辺の方、あれの一番細い角と同じである。
三角定規で見れば細いが、トラックがその角度でナナメってるのを見たら怖い。
まして自分が運転席に乗っているとしたら、もうダメ感はハンパないだろう。
もうダメとしか思えない傾斜にも耐えられる消防車だけが、ここから世に出荷されている。
見学スポット
ナカムラ消防化学には、全国から見学や視察などが訪れるという。
そして、一般の見学者も受け入れている。
われわれが訪問したこの日も、地元の高校生が大型バスで見学に来ていた。

会議室での座学と工場見学のフルコースを終えた高校生たち。貴重な体験である。
興味のある方はナカムラ消防化学さんに相談してみてはいかがだろうか。

工場を案内してくださった、なじみなのに初対面の担当氏とスラリとスマートな営業氏。