前回までのあらすじ
顧客を選べない公務員・消防職員がブレずに職務を全うするのは大変なことである。
ゴネる市民30パターン
若手消防職員が査察業務を知るための初級テキスト「流れでわかる!査察STORY」がめっぽうオモシロいのでご紹介するシリーズ、第3弾。
査察の意義とか消防法とかは専門的すぎて一般ウケしそうにないので省略するが、消防常識と社会一般のギャップを扱った部分はかなり楽しめる。
予防査察の現場では、消防職員なら考えられないような言葉が関係者から発せられる場合があり(以下略)
「流れでわかる!査察STORY(編著監修・立入検査研究会/東京法令出版)」より
この本では、手ごわい相手に対峙する4つのパターンが紹介されている。
とは言っても、実際の現場では個々の事情に応じて臨機応変な対応力が求められる。
具体的な事例もたくさん紹介されているので、現場経験の少ない若手にとっては心強いテキストとなっているのだろう。
(事例が30個も挙げられているところから、現場対応の苦労がうかがえる)
消防常識と社会一般のせめぎ合い
事例にはゴネる人ばかりが登場する。
どの人も、言い訳したり人のせいにしたり損得勘定をしたりで、なんとかしてこの査察を逃れようと必死だ。
相手も必死だが、消防職員も社会公共の安全のために引き下がらない。
消防と社会の間で活動している私にとっては、どっちの言い分も痛いほどよくわかってオモシロい。
消防点検をやっていて、私も似たような相手に出くわすことがある。
私でさえ経験のある、あるあるなクレームをご紹介しよう。
なお、それぞれの事例に対するコメントは私見である。
よくある言い分
事例1「ウチには燃えるものがないから大丈夫だ」
わかります、わかります。
でもちょっと待ってください。
「燃えるものが一切ない」なんて考えられなくないですか?(あなたは不燃なんですか)
事例2「なぜうちにだけ来るのか。他のところも全部やれ」
共同住宅にありがちなケース。
わかります、わかります。
声をかけて同意を得たお宅すべてを点検しています。あなただけが厄介ごとに巻きこまれたわけではないのです。
事例3「法律が勝手に決めたんだから、税金で設備をつけろ」
設備の不足が判明したときにあるあるな発言。
わかります、わかります。
設備の完備・管理は建物所有者の義務であるというルールはさておいて、税金は我われ点検業者は関与しかねます。
事例4「ずっと言われなかったのに、今さらいろいろ言われても困る」
さっきも言ったけど、設備の完備・管理は建物所有者の義務です。
わかります、わかります。
ずっと放置だったから、課題がたくさん溜まってしまいましたね。
いっぺんにリニューアルするのは大変だから、少しずつ改善していきましょうね。
まとめ
査察も消防点検も、一般の人にとってはよくわからないメンドウな突発イベント。
ゴネて回避できるのなら、そうしたい。
その気持ちはよくわかるが、消防を相手にゴネたってムダだ。
彼らは、消防法にのっとって市民の安全のために職務を果たそうとしているのだ。
それだけではない。
消防職員は、我われ一般人がほどんど知らない火災現場を知っている。
火災の恐ろしさを知っている。
そういうわけだから、防火にちょっと熱くなるくらいは許してあげてほしい。