前回までのあらすじ
生活習慣病の根治は時間とカネと負担が大きいが、日々の暮らしで予防すればラクで簡単で安くすむ。
ひとたび火事になれば、その被害は建物、財産、ときには人命にまで及び、損額金額は計算のしようがないくらい大きい。
その巨額の損害を、日々の留意で安上がりに防ぐのが防火管理。
安上がりに防ぐにはなにをすればいいのか。
その具体例と対策を、よくある落とし穴を交えながらご紹介する防火管理者のためのシリーズ。
さて。
防火管理者がやる業務は次の通り。
- 消防計画を作る
- 消防計画に沿って、訓練をやる
- 消防計画に沿って、設備を管理する
- 消防計画に沿って、火の取り扱いを管理する
- 消防計画に沿って、避難・防火のシステムを管理する
- 消防計画に沿って、収容人員を管理する
- そのほか放火管理で必要なこと
設備の管理
設備の管理とは、建物中に散りばめられた消防設備をいい状態で保つこと。
消防設備はイザというときのためにある。
だから、ふだんはまるで使わない。
むしろ「使うな」と注意書きされるくらい、使わない。
だけど、イザ使うとなったらパーフェクトに使えなければ意味がない。
ふだんは見向きもしないくせに、困ったときだけ頼りにされる。しかも完璧な働きを要求される。
消防設備側から見たら「勝手なこと言うな」であるが、そういう使命を担っているのだから仕方がない。
完全作動のために
イザってときに100%の働きをしてもらうためには、日ごろの関係性が重要である。
与えてもらいたければまず与えよ、だ。
というわけで消防設備の日常点検をしよう。
専門的な作動試験は専門家に任せるとして、防火管理者の日常点検は気楽にいこう。
通りがかりにあいさつして、たまには肩のひとつも揉んでさしあげる。そんな感覚でいい。
たとえば消火器なら、次のような点を注意して見てほしい。
- いつもの場所にいるか
- ジャマな物に囲まれていないか
- 消火器の顔色はいいか
- 元気そうにしているか
規定の場所に設置されており、周囲に障害物がなく、変形損傷がなく、蓄圧式なら圧力が下がっていないかなどを確認する。

(例)ちょっと様子のおかしい消火器
その他の設備については、防火管理者講習のときに使ったテキストに「日常点検の要領」とかいう項目があるはずなのでご確認いただきたい。
プロの点検
日常点検はあいさつ程度でいいが、半年に一度は有資格者によるガチ点検が必要。
それをさせるのが防火管理者の仕事である。
ガチの消防点検は、ややこしくて膨大な消防法のルールに沿って行われる。
ルールを熟知して点検をやる有資格者が、消防設備士であり消防設備点検資格者だ。
彼らの知識と技術力を信頼して点検を任せよう。
ここでよくある落とし穴。
資格者を無条件に信頼して保守管理を丸投げしてしまうと、防火管理者の責務を果たしたことにならぬ。
点検者が信頼に値する仕事をしているかを気にとめ、点検の結果がどうだったのか把握し、修理が必要なところは積極的に改善しよう。
まとめ
消防設備の管理には、防火管理者がやる日常点検と、専門家による定期点検がある。
日常点検は主に見た目のチェック、定期点検は主に作動試験。
専門家による定期点検の場合は、結果の説明を受けてよい状態であることを確認する。
業者に丸投げはもとより、いつでも非常時に対応できるよう、故障した機器は専門家に相談して改善しよう。