前回までのあらすじ
消火器はとても簡単な3ステップで使える。
誰もがサッと使えるように、消火器業界全体で示し合わせて統一してある。
使い方の3ステップは消火器本体にイラスト付きで描かれているので、取扱説明書をなくしがちな人でも安心だ。
ところが実際に消火器を使ってみると、多くの人がこの使い方イラストに描かれていない部分で躓いてしまう。
これは全国の消火器メーカーも気づいていない盲点なのではないか!?
というツッコミをしたのが前回。
もうひとつの落とし穴
消防訓練でみなさんに消火器の体験をしていただいて気づいたんだけど、意外な落とし穴はもうひとつあった。
それが、この部分。

安全栓を引きぬく
安全栓(黄色いピン)を抜くのなんて、極めて簡単だ。
本体のイラストには上向きの矢印が描かれているし、「引き抜く」という言葉だけでもどのように力を加えればいいか理解できる。
しかし!
見るのとやるのは大違い。
消防訓練で実際に使ってみるとスムーズにピンを抜けず、手間取る場合がある。
なんで?
もう一度、ピンを抜く瞬間を見ていただこう。
ピンの根本をよく見ると、金色のテープがついている。
このテープは安全栓封印シールという、公式の消火器パーツ。
過去にピンが抜けたかどうかを確認するための封印で、樹脂製の封ロックの場合もある。
消火器を使う人にとって封印シールの抵抗力は想定外なので、イメージしていたスムーズな手際とのギャップが生じて一瞬うろたえてしまう。
たかがテープ、たかが一瞬ではあるが、非常時の一瞬は命取りになることもある。
だったら、テープなんか剥がしちゃえば?
テープがない、または剥がれている、破れているということは、ピンが抜けた可能性があるということ。
ということは、レバーが動いて中身が放射されたかも?
ということは、消火器の中の薬剤やガスが減っているかも?
ということは、念のため中を開けて確認しなくちゃ!
ということになる。
たかがひとすじのテープだが、剥がれ・破れはオオゴトになる。
めんどうだからと素人さんが勝手にテープを貼っちゃダメというのは、みなさんならおわかりだろう。
たかがテープに大げさのようだけど、その取扱いには専門の資格がいる。