「あちらの窓から今ちょうど富士山が見えるんですが、見てみませんか?」
静岡の上空にさしかかったあたりで、美しき客室乗務員に誘われた。
夫婦で東京行きの飛行機に乗っていたときのこと。
えっ、なにこの特別感!?
とかなんとか、浮かれ気分で客室乗務員についていった。
しかし。
われわれ夫婦だけが呼ばれたこのお誘いは、ひょっとしたら、「ちょっと気になる乗客を呼び出して素性を確認してみた」というやつなのではないだろうか。
というお話。

黒い富士山。温暖化の影響で、山頂に雪が残らないのだとか。
飛行機に乗るなんて、年に1回あるかないかの暮らしをしている。
だから飛行機に乗るのが、オトナになった今でも嬉しい。
このチャンス、1秒たりともムダにはしない。
100%楽しみたいと本気で思う。
というわけで、機内で目につく物珍しいものはすべて写真を撮る。
非常のもの

プラス・マイナスのバッテリーマーク。
頭上にある、照明や空調のスイッチのそばにバッテリーマークがある。
主電源が落ちたときは、ここに内蔵されたバッテリーで照明がつくようになっているに違いない。
ってことはこれ、非常灯だ。
ナニコレ?という小さな疑問を、自分の持っている知識で解決できるのってオモシロいなぁ。おトクだなぁ。
禁煙場所の灰皿
「トイレ内の表示にオモシロいものがあるよ」
トイレから戻った夫がそ言うので、立て続けに私もトイレへ行ってみる。

トイレ内の禁煙マーク。

その直下にある灰皿。
この灰皿はどういう意図でつけられてるんだろ。
すぐ上に、キッパリとした言い方で禁煙を宣言しているのに。
トイレでこっそりタバコを吸った乗客が、禁煙の表示を見て慌ててタバコの始末をするため。
とかいう理由しか思いつかない。
イマイチしっくりこないのは、その理由が間違っているからだろう。
ナニコレ?という小さな疑問が結局よくわかんなくて、自分でも「それはないな」と思うような解決法しか思いつかないのもまたオモシロい。
それにしても気になる。
座席ではない座席

絶対に誰も座らない、謎の席。
誰も座らない座席がひとつある。
座らないのではなく、座れない。
座面が、イヤガラセのように突き出ているので座れない。

「ここは座席ではありません」
ハッキリと「座席ではない」と書かれている座席。
この矛盾はさすがに自分では解決できず、かと言ってヘンな解釈を作り出すこともできないので客室乗務員に聞いてみた。

7列目の、妙な記号がそれ。(JALホームページより)
この席だけが通路にせり出すので、ここに座ってると足を踏まれるんだそうだ。
確かに、この席は通路を移動する際の同線上にある。
機内サービスのワゴンもガンガンぶつかってきそうだ。
3個セットの座席を使用しているので、やむなくこういう座席ができてしまう。
しかし、ここに人が座るとなにかと不都合が生じるので、販売しない席になっているそうだ。
こういう、「知ってても知らなくてもどっちでもいいんだけど、知っていると人生にオモシロみが増す」というようなムダ知識を仕入れるのはオモシロイなぁ。
わからんことは聞くに限る。
呼び出されて尋問
というように、写真を撮ったりあれこれ聞いてみたり、立て続けにトイレに入ってみたりした。
それで、「ちょっと気をつけといたほうがいい乗客」ということになったんではないだろうか。
美しき客室乗務員に誘われて行って、ほんの10センチくらいの小窓から富士山を見たあとはおもむろに、「機内関係のお仕事されてるんですか?」ときた。
にこやかな尋問である。
夫は素直に富士山を眺めていたが、そのとき私は足元にあった非常用グッズの収納箱をいじっていた。
だって、消火器のピクトが目に留まってしまったんだもん。
非常用グッズの収納箱をいじる行動、怪しいといえば怪しい。
事情が分かれば安心
ここでようやく事情を話して納得してもらい、ついでに非常用グッズについての話も聞くことができた。
そして釈放。

富士山より気になるピクトたち。
事情を話せば先方にもわかってもらえ、快く見せてくれることの方が多い。
非常に関する訓練や非常用グッズを使うテストがしょっちゅうあり、それに合格しないと乗務できないという客室乗務員。
カッコイイなぁ。