
今日こそオマエに送水してやるぜ。
地球外生命体だの擬人化だの博物館だのと、もてはやされている送水口。
自分でも擬人化を楽しみながら、消火設備のなにがそんなに魅力的なのか、まったく謎である。
それにしても人気のある送水口。
聞くところによると送水口の愛好家という人たちがおり、送水口にまつわるイベントを企画しているというではないか。
ちょっと待て。
送水口のやるべきことは、なでまわされて写真を撮られてコレクションされてもてはやされることじゃなかったはずだ。
本当の役割は、高層階に水を送ることだったはずだ。
展示されたり娯楽あつかいされたりしているのは仮の姿。
今日こそそれを思い出させてやろう。
ザ・連結送水管耐圧試験
送水口は消防士が消火活動で使うものである。
設備の表示に「消防隊専用」と書いてある。
だからわれわれ一般人はどんなに送水口を愛していても、その姿を愛でるだけしか方法がないのだ。
使ってみることはできない。
しかしここにひとつだけ例外がある。
いくら消防隊専用とは言っても、ふだんの保守管理まで消防士がめんどうを見るわけではない。
ここで登場するのが消防設備士。
消防設備士は、常時非使用の送水口が非常時に完全作動するように、定期的に検査をしている。
検査では、配管が水圧に耐えられるかどうかを見る。
そのために送水口から水を送る。
それが連結送水管耐圧試験。
送水口に送水。
それこそが送水口の本来の使い方。

念願の送水はここから。

コックと圧力計がものものしい、圧力試験機器を接続。
チェーンのついた送水口のフタをはずす。
鋳物の触れ合うかすかな、しかし重々しい金属音がする。
そしてそこへ圧力試験機器をブチこむ。
差込式の継手をジョイントするとき、そのガチャリという感触にはいつも興奮させられる。

これが結合するときがたまらない。

圧力試験機器のほうも魅力的。
いよいよ送水。
配管いっぱいに水を詰めこんで、その水圧に耐えられるかどうかを検査する。
検査の主役は送水口だけではない。
建物をめぐる配管に水漏れがないか、そこんところが肝心。
そしていつもは建物のなかにひっそりと隠れている、送水口の相棒・放水口も、この日ばかりは愛でてもらえる。

屋上にひとり、放水口。うつむいてる場合か。
送水口を愛する人へ
消防隊の消火活動と違って、検査は地味である。
なんといっても緊急度合いがケタ違い。そして、今のところ人命がかかっていない。放水しない。
それでもやっぱり「送水口に送水する」という行為はレアである。
送水口を愛し、送水口との距離を縮めたい人は、消防設備業者になってみるのもいい。