「強く押す」いろいろ
仕事がら、それはもうさまざまな「強く押すボタン」を目にする。
よくあるのはメーカーの作った一体型。
「強く押すボタン」と赤ランプと内蔵のベルが、ひとつの箱にまとめてある。

まぁだいたい、こういうやつである。
ホントはもっと細かく、屋内消火栓についてるやつだとかP型1級だとか2級だとかの区別があるんだけど、ここでそういうことを言ってもつまらんので割愛する。
ここでは「強く押したい衝動に駆られるやつ」ということで話を進める。
はかなさがいい
強く押すサングラスのときにも言及したが、「強く押す」には2種類ある。
ナイーブな透明の割れるやつと、黒くしたたかな割れないやつだ。
使い勝手がいいのは何度も使えるしたたかなやつだが、好きなのは割れるやつ。
1回使ったら終わり。割れるはかなさがたまらない。

割れる愛しいやつ。
デザイン重視
しかし、もっとも愛でるに値するのは、壁に直付けのやつだ。
広い壁面に唐突に現れる赤い「強く押す」。
ちょっと探せば、近くに赤ランプを見つけることができる。
直付けを採用しているのはホテルやイベント会場、高級店の入るテナントビルなど雰囲気重視の建物であることが多い。
必要なものがすべてセットになった一体型をあえて使わないのは、やはりデザインへのこだわりだろう。
確かに既製品は、いかにも機器といった武骨な箱である。
内装によってはムードをブチ壊しかねない。
そこで配線を壁の中に隠し、必要最低限のものだけを表に出す手法を用いることがある。
これがなかなかいい。

奥まったトイレといえどもデザイン重視、のホテル。

コンパクトな横並びを採用する、おしゃれなテナントビル。

可動式の防火扉に組みこまれた一式。内部がどうなっているのかが気になる。
ところが、20年のキャリアを持つ消防設備士の夫は、この壁直付けが気にくわないという。
なんですと!?
非常用だから目立つのが最優先だと言うのか?
だからと言って、ふだんのムードをブチ壊す意匠はいかがなものかと思うがなぁ。
気にくわない理由
夫に気にくわない理由を聞いてみると、完全に技術的な問題であった。
壁に直付けということは、配線は壁の中。
だから修理をするときには壁をはがさなければならない。
それが気にくわないという。
ナールホド。
そりゃそうだよね。
つまり、私が壁直付けの意匠にうっとりとなっている横で、夫は改修工事の手間のことを考えているのである。
同じものを見ていても、夫婦でこうも違うものなのか、という話。