平和ボケのなにが悪いってんだ。
戦争よりよっぽどいい。
広島の原爆ドーム。
「はだしのゲン」を読んでから、「ひろしまのピカ」を読んでから、いずれ必ず行かねばなるまいと思っていた場所。
このほど広島へ行くことになった。
このチャンス、逃すまじ。
どうせ原爆ドームを見るなら、隣接する原爆資料館にも。
ところがこの資料館が予想以上にキツかった。
戦争の悲惨さを語るものはすべて、胃の腑を絞られたような気分にさせられる。
子どもを持ち、家族が増えてからはなおのこと。
資料館には、原爆により死んでいった子どものブースがある。
破れた服、錆びた三輪車、写真と日記。
彼らの死の間際の様子が、最後の言葉とともに語られている。
「こんな戦時中だから、たとえ子どもの自分であっても長生きはするまいと思っていました」
幼い子どもがこんな覚悟をしなければならいなんて。
愕然とした。
自分の子どもにこんな覚悟をさせるわけにはいかない。
たくさんの人がここを訪れている。
平和ボケした日本人だけでなく、全世界の人がここに来てほしい。
戦争の真実と末端のありさまをまだ知らない人に、来て、見てほしい。
それはとてもキツいことだけど。
キツさに耐えきれず、逃げ出すように資料館から出る私と入れ違いに小学生の一団が入っていった。
この子たちは、だれひとりとして死の覚悟などしていないだろう。
かろうじて、今は。
この子たち死の覚悟をさせるくらいなら、たとえボケてても平和の方がいい。