アマチュア無線
ところで、私はアマチュア無線の免許を持っている。
アマチュア無線とは、個人が趣味の範囲で楽しむ無線通信のこと。
今のように携帯電話やインターネットが普及していなかったころでも、無線を使って遠くの見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しんでいたのだ。
ツールは変わっても、求めるものは変わりばえしないのだな。

正確に言うと、免許の更新をしていないので免許申請をしないと使えない。
小学3年生のときにアマチュア無線を取得した。
多趣味な父親の影響である。
「オトーサンがやってるアマチュア無線を私もやりたい!」とかいう影響の受けかたではなく、「いつの間にかアマチュア無線をやることになっていた」という巻きこまれ型の影響だ。
つまり、自分の中から湧いて出るモチベーションなんかまるでないわけ。
「やれって言われたからやる」という、極めて脆いモチベーションでやるわけ。
国家試験に挑む
いまでこそ養成課程講習会で免許をもらうこともできるようになったアマチュア無線だが、当時は国家試験のみ。
試験の内容は法規と無線工学。
法規のほうはなんとなく理解できても、無線工学の問題はこんなやつ。

この試験で「Ω」を知った。
もう一度言うが、私は小学3年生で国家試験を受けてアマチュア無線の免許を取った。
‥‥どうやって取ったんだろ。
記憶にあるのは、夕食後に父親と一緒に問題集に取り組んだこと。
問題はすべて丸暗記。
父発案のムリヤリなダジャレで頭に叩きこむ方法。

「チェッていでんだ」と書いてある。
「ツェナダイオードはなんの回路に使われるか」という問題では、ツェナダイオードの冒頭を「チェッ」ということにしてから定電を選ばせる。
停電にチェッと舌打ちをしているシチュエーションなわけだが、ムリヤリすぎる。
子どもに付き合う
ここでもう一度、冒頭の写真を見ていただきたい。
免状の後ろに黄色い紙がある。
これがわが父お手製の丸暗記のチェックシートだ。
法規と工学を25問ずつ、毎日50問やっていたらしい。
ダメな問題は何度もダメで、繰り返しおさらいをさせられていた様子もうかがえる。
改めて振り返ると、小学3年生でこの試験に合格した私ってすごい。
私もすごいが、それに付き合った父親がもっとすごい。
私には、当時の自分と同じ年ごろの子どもがいる。
だが同じ指導を自分の子どもにやれる自信はまるでない。
わが子は難しい問題に行き詰るたび、ヒステリーを起こすに違いない。
当時の私だって行き詰るたびにヒステリーを起こしたはずだ。
泣いた日もあっただろう。
それでもめげず、見事私を合格に導いた父。
驚異的である。
もう一度、免許申請してみようかな。