今月のオススメ品
自家工場での研究開発が功を奏し、次々に新商品を世に送り出しているムスメ商店。
今月のオススメ品はチーズ風味のクッキー。
おなじみのホットケーキミックスにスライスチーズを練りこんだ一品で、甘さと塩気のバランスがなかなかいい。
やや固めに焼いたハードタイプ。
監修のオカーサンも太鼓判を押す仕上がり。
これならオトーサンにも自身を持って販売することができるだろう。
販売のタイミング
夕食後、「もうちょっとなんか」と口さびしさをまぎらわせるものを探してオトーサンが動く。
絶好のタイミング。
ムスメ商店の新商品、カリッと香ばしく焼いたチーズクッキーはいかがですか。
と、ホワイトボードの原価メモ兼ポップを見せながら声をかける。

仕入先に支払う原価メモ。
どう見てもチーズワッキー。
微妙な違い
余談だが、文字には書き分けの難しいものがある。
形が似ているため、ちょっとした角度のちがいで違う文字に読めてしまうやつ。
代表的なのは、カタカナの「ソ・ン・リ」「ツ・シ」。

「ツ」か「シ」か。

書きようによっては「ベソジソ」と読まれてしまう例。
そして「ク」と「ワ」も。
「ク」と「ワ」をハッキリ書き分けるには一画目の角度が大事。
左下に下ろせば「ク」、右下にすれば「ワ」だ。
どう乗り切るか
さて。
クッキーだった商品がワッキーになってしまったムスメ商店、「ワッキーでーす!」とクッキーをワキから出して見せるパフォーマンスでその場の笑いを取って見事売り切った。
マジメで硬いムスメ商店がそんなパフォーマンスをするとは。
てっきり「ワッキーではありませんッ!クッキーですッ!」と言い張るんだと思ってた。
頑ななその態度に顧客の購買意欲は急降下し、いい感じで来ていた販売のチャンスは流れてしまうのだと思ってた。
捨て身かどうかわからないが、ムスメ商店のとっさのパフォーマンスはその場を和ませ、顧客はチーズクッキーというモノと一緒にチーズワッキーという体験も買うことができた。満足度はすこぶる高い。
これが噂のエクスペリエンス・マーケティングというやつか!
〇〇したい欲
モノが飽和した現代ではみんな、体験を得て幸せを感じたいのだ。
ルールは厳守されていても杓子定規な硬い対応は受け入れがたい。
「ク」が「ワ」に見えちゃったんなら、せっかくだから「ワ」でオモシロいことをしよう。