
はじめてのおこづかい(生源寺美子)
はじめてのおこづかい
これは、定期的なおこづかいシステムの導入をきっかけにお金の使い方を経験していく小学1年生の物語。
欲しいものと所持金のバランス、果たさねばならぬ友達との約束など、お金を使い始めた子どもならではの憧れや葛藤がリアルに描かれている秀逸な絵本である。
憧れの高価なねんどけしごむをクラスメイトに買ってあげる約束をしてしまった主人公は、おこづかいから費用を捻出するのに苦労する。
週に50円のおこづかいで300円の買い物をしようというのだ。
真っ当にためてもひと月半かかる。
すごいお母さん
お菓子や文房具など、ほしいものがたくさんある主人公にとって、自分の欲を満たしながらの貯蓄はそりゃあ大変なことである。
クラスメイトから催促され、苦肉の策でおこづかいの値上げをお母さんに交渉するも「そりゃダメね」あっさりと断られてしまう。
小学生の、お金に関する切ない気持ちがヒリヒリと伝わってくる。
私にも覚えのあることばかりだ。
それにしてもこのお母さんがすごい。
我が子の経験をひたすら見守り、決して手を出さないお母さんがすごい。
子どもの相談にはちゃんと乗っている。
だがそれはグチを聞いている程度で、「おやおや、そりゃ大変だこと」なんて相づちでまるで他人事だ。
巻き込まれて一緒にてんやわんやしたり、しない。
そこがすごい。
親の気持ち
我が子がお金の使い方で苦悶しているとき、親としてどうしたらいいのだろうか。
どうやらクラスメイト数人に、なにかを「買ってあげる」と約束しているらしいじゃないの。
担任の先生に相談したほうがいいのだろうか。
お友達の親御さんはこのことを知っているのだろうか。
うちの子、いじめられたりしてないんだろうか。
そういうことを考えちゃうよなー。
親になった今、別の意味でハラハラしながら読む絵本だ。
春・夏・秋・冬を見守り続ける
お金の使い方に悩みながら主人公は冬を迎える。
つまりこの子、クラスメイトに「買ってあげる」と言った約束をズルズルと引きずっていたのだ。
若葉のころから木枯らしの季節までだから、約8ヶ月。
本人のプレッシャーも相当なものだろうが、それを見守り続けたお母さんの悩みはどんなものだっただろう。
一度もブレずに、よく付き合ったもんである。
ホントすごい。
まとめ
というわけで、お金を扱い始めた子どもにとっても、子どもにお金を与え始めた保護者にとってもたいへん参考になる良書なので、ここに強くおすすめするしだいである。

物語中に出てくるこれをパクってお年玉袋を作ったことがある。