あまり知られていないが、私の名前は「峡子」である。
名づけ
この字の意味は、山と山の間、はざま、谷あい。
私が生まれた地がそのような場所だった。
標高1,000メートルを超える険しい山々のすき間に集落がある村。
人が住める場所は村のわずか4%という。数字からその辺境ぶりがうかがえる。
そんな地理的特徴から、日本三大秘境のひとつに数えられるような村で私は生まれた。
まぁ言ってみればこんな感じのとこ。
半日村(絵本ナビ)
故郷の風景を子どもの名前に織りこむ親心。
しかしだな、だからと言ってこの漢字を人名に使うのはいかがなものか。
子どもの命名って、もっとこう、大きくとか高くとか幸あれとか、そんなニュアンスでつけるもんだろうが。
それが谷あいって、どうなのそこんとこ。
簡単なのに難解
とはいえ、珍しい名前であることは間違いない。
同姓同名どころか、この漢字を名前に使っている人にお目にかかったことがない。
(検索してみると女優とデザイナーが出てくるが、彼女たちが本名で活動しているのかどうかはわからない)
漢字そのものは中学校で習うやつなので、そう難しくない。
初めての人にも比較的スンナリと読んでいただける。
ただし、電話で説明するのにはいつも難儀する。
海峡のキョウです。あのホラ、「津軽海峡冬景色」のキョウ。
とかなんとか言っても相手の世代によっては分かってもらえない。

愛媛県今治市・来島海峡にて。
えーと、山編に、「来る」の下まで突き抜けないやつ。
てな感じで、もうホント苦しい。
苦しいが、前述のとおり義務教育で習う漢字なので、このあたりで相手もなんとかわかってくれる。
書き間違い
というわけで、簡単なのに難解なこの名前。
フツーの文章ならこれだけ知ってればなんとかなるという約3,000文字、JIS第一水準にもエントリーしている漢字ではあるけれど、書き間違はよくある。
あくまでも感覚だが、他人による記述では2割くらい間違われる。
似た漢字に挟とか狭がある。
これもまぁ名づけには使われにくい、飛躍とはかけ離れた字だ。
にもかかわらず挟子とか狭子と書かれることがある。

登録データを元に宛名を印字している‥‥のではないのか?
余談だが、狂子って書かれたときはさすがにギャフンってなった。
もう完全に違う漢字じゃん。その前に、意味どうなの。

旧字体で書かれることもある。つか、旧字体なんかよく知ってるなぁ。
だからって「人の名前を間違うとはけしからん!」って憤るわけではない。
だってさ、「簡単なのに難解」って絶妙じゃん。
やろうと思ってやれるバランスじゃない気がする。
説明しにくいし書き間違いもされるけど、オイシイ名前をつけてもらったもんだなぁと思っている。
【ついでに読みたい名前の話】
まちがいなく肌身離さず一生使い倒してもらえる、奇跡の贈り物
【一方、夫の名前は】
【よくある質問】代表取締役は吉岡‥‥えーと、リュウジさんですか?